リハビリ法

Q21脳梗塞や脳出血による手足のマヒは、リハビリでどれくらい回復する?

リハビリ(機能回復訓練)を行えば、手足のマヒは多少なりとも回復すると考えていいでしょう。脳梗塞や脳出血の治療後には多くの場合、マヒや言語障害などの後遺症が残ります。こうした後遺症の改善には、リハビリが欠かせません。

 

リハビリは、発症からの時期によって

急性期(発症後1~2週間まで)

回復期(発症後3~6ヶ月まで)

維持期(回復期以降)

の3段階に分けられ、順を追って勧められます。何かができたら次に進むというように、着実にステップアップするので、退院後にリハビリをやるかやらないかで、QOL(生活の質)に大きな差が出るのです。

 

リハビリは早期に始めるほど効果も高く、軽度のマヒならたいてい回復します。中等度から重度の場合、健康なときと同じ状態まで回復するのは困難ですが、回復期を過ぎても改善は期待出来ます。あきらめずにリハビリを続けることが大切です。

 

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Q22マヒを回復させる治療法「磁気療法」があるそうですが、どんな治療?

「磁気療法(正式には経頭蓋磁気刺激法)」は、頭部に磁気を当てる新しいリハビリ法です。これを行うと、死滅した脳の神経細胞を補う情報伝達経路が再構築され、マヒの回復を促すと考えられます。以前は、いったん死滅した脳の神経細胞は再生しないというのが医学の常識でした。

 

しかし最近の研究によって、脳細胞の一部が死滅しても周囲の神経細胞が代役を果たせることがわかったのです。とはいえ、脳が障害を受けてから時間がたつにつれ、情報伝達経路が再構築されにくくなります。リハビリで大幅な機能改善が期待できるのは発症から3ヶ月までの急性期・回復期で、マヒなどが改善せずに慢性期へ入ると、後遺症が定着してしまします。

 

そこで開発されたのが、脳に磁気を流し、脳の神経細胞と脊髄・抹消神経の間で情報を伝えている活動電位を高め、運動機能を回復する磁気療法です。

 

磁気療法で神経の情報網へ人為的に磁気を流すと神経信号が増えて、脳と筋肉の間の連絡がスムーズになります。実際に、磁気療法を行うと慢性期に入った難治のマヒでも回復することが珍しくありません。中には、数年来のリハビリでほとんど回復しなかったマヒが、磁気療法によって改善した例もあります。

 

では、私たち東北大学が行っている磁気療法のやり方を紹介しましょう。

磁気療法は、コイル(導線を円形に巻いたもの)を頭部に近づけ、電気を流して行います。すると、コイルから磁気が出て、脳の特定部位に微弱の電流が発生するのです。

 

磁気刺激には、一定時間に当てる回数が多い(高頻度)と脳の働きが活発になり、当てる回数が少ない(低頻度)と脳の働きが制御される性質があります。そして、磁気療法では、高頻度と低頻度の使い分けが重要になります。

 

脳梗塞や脳出血を発症した人の多くは、右脳・左脳のどちらか一方に障害を受けています。ところが、どちらかが障害を受けて働きが低下すると、もう一方の働きが過剰になり、障害を受けた側の働きを抑える場合があるのです。

 

そこで磁気療法では、脳波やMRIなどの検査を行い、脳のどの部位に障害があるのかを調べます。そのうえで、磁気を流す部位を特定し、高頻度と低頻度を使い分けるのです。磁気療法では、運動訓練を同時に行い、患者さんが体を動かすタイミングに合わせて脳に磁気を当てる方法もあります。

 

磁気療法では効果が期待できるのは、障害の度合いが3~5の中等度・軽度の人で、1~2段階の回復が期待できます。完全マヒである2の人は改善が難しいでしょう。

 

ところで、昨年、新しい磁気療法が登場しました。それは、「未抹消神経磁気刺激法」(以下新磁気療法)です。新磁気療法では、マヒした手足に専用コイルで磁気を当てます。すると、筋肉の運動感覚を担う固有感覚の抹消神経を通じて脊髄や脳が刺激を受け、情報伝達経路が再構築されやすくなるのです。

 

装置は小型軽量であり、ベットサイズで簡単に使用することができます。また、高頻度と低頻度を使い分ける必要なく、マヒした部位に磁気を当てればいいのです。

 

新磁気療法は、まだ研究段階ですが、一部の大学病院などで患者さんのリハビリに取り入られてます。

 

【夢21誌引用 出江紳一教授談】

 

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