亜鉛不足だけじゃない

高齢者に多い味覚障害、まず亜鉛不足が疑われる今年3月には医療用の亜鉛補充薬が発売され、亜鉛欠乏症の一症状として味覚傷害に対する理解が少し高まった。しかし、実際の味覚障害(味覚異常)の原因はさまざまです。

 

兵庫医大(兵庫県西宮市)耳鼻咽喉科・頭頸部外科で味覚専門外来を担当する任智美講師は「味覚障害は高齢者に多く、訴えはいろいろ。原因別では、今は亜鉛欠乏症かどうかが分かるようになってきたが、突発性(原因不明)・亜鉛欠乏症一番多く3分の1ぐらいを占める」と話されます。

 

◇下の部位別検査

味覚外来を受信する患者の年代は70代が一番多く60代、50代、40代と順に下がっていく。80代以上は30代とおなじぐらいになるという。「症状は口が乾く(口腔乾燥症)、何を食べても苦く感じる、いつもと味が違う(異味症)、塩味と酸味を間違える(錯味症)、下がピリピリする(舌痛症)、何を食べてもまずい(悪味症)・・・」

このほかにも「味がしない」(味覚脱失)、「味が薄い」(味覚低下)、「塩味がきつい」(味覚過敏)、「甘みだけがわからない」(解離性味覚障害)など多彩。

 

心因、薬剤性も多く「年のせい」で諦めないで

原因解明のために多くの検査がある。味覚を測る検査は二つ。電気味覚計を舌にあてて味覚障害の程度を測る定量検査。ろ紙ディスク法では、ろ紙を用いて味の質を測る。四つの味を5段階で測るという。舌の領域によって支配する神経が違うので、部位別の神経の検査もある。

 

「亜鉛欠乏による味覚障害では、舌表面の味蕾は一定のサイクルで細胞が入れ替わるが、亜鉛不足で味細胞が新生されなくなる。このため古くなった味細胞は味が感じられず、味覚障害となる」

 

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◇効果的な漢方薬

味覚神経の障害は四つに分かれる。

①舌の前部3分の2の味覚を支配する鼓索神経の場合、顔面神経まひや中耳手術、抜歯などによるものが多い。
②舌の後部3分の1の味覚を支配する舌咽神経の場合、顕微鏡下の咽頭微細手術後などに出現する。
③軟口蓋(口内の奥上部)の味覚を支配する大錐体(だいすいたい)神経の場合、加齢性の変化が顕著に影響する。
④舌根部の一部は迷走神経が支配している。

「脳血管障害や頭部外傷、認知症でも味覚障害が起こり、味覚中枢障害がおこり、最近多いのが心因性の味覚障害で、味覚を感じる機能は十分あるが、味を感じていないようにと思ってしまう」

 

 

頭部外傷では、味は感じるが何の味か分からないことが多い。薬剤性の味覚障害では、亜鉛を対外に排出してしまう作用で亜鉛が不足する。薬を中止できない場合は亜鉛摂取を増量するという。

「原因別では、亜鉛欠乏が疑われるケースについで2番目に多いのが心因性で、治療はなかなか難しい。3番が薬剤性。65歳未満では感冒後の味覚障害も結構多い」

実際の治療では、原則的に全例で亜鉛の内服療法が行われるという。任講師は「一つの選択肢として補中益気湯や八味地黄丸など漢方を使うことも多い。味覚障害によく効くので一般的な治療になっている。高齢者は年齢のせいと諦めないことが大切」と話している。

 

 

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